東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream (サンドリと呼ばれてます)

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精神対話士学会で発表された論文「東日本大震災 (母子)避難者への心のケア-愛と勇気を学ぶ-」@第9回 日本精神対話学会(開催日時は2014年11月2日、3日)

第9回 日本精神対話学会(開催日時は2014年11月2日、3日)で、
精神対話士の三石弘美さまがご登壇され、
下記の論文を発表してくださいました。

東日本大震災 (母子)避難者への心のケア
-愛と勇気を学ぶ-

                             精神対話士
                             三石 弘美
 
はじめに
東日本大震災3・11から、約3年半が経ちました。
その後、(母子)避難を余儀無くされ、強制避難勧告区域から外れているというだけで国、東京電力からも殆ど何の保証も得られないという厳しい状況下で、必死に我が子を守るために頑張り続ける人々の現状を、どれだけの方々がご存知でしょうか…
未だに当たり前だった日常生活に戻れない人々がたくさんおられます。
(全国の避難者数は約24万6千人、全国47都道府県1,152市町村に所在。   平成26年8月29日現在 復興庁調べ)
平成25年11月より、このように関西地区へ避難されている方々の心のケア・ボランティアとして、大阪府見守り隊“ほっ!と相談”がスタートし、私も1月より参加させていただいております。
本稿は、対話開始からの記録を振り返ることにより、学ばせていただいた事、対話の効果、精神対話士としての役割、今後の課題について考察したものであります。

避難者の森松明希子氏につきましては、実名での掲載・個人情報の開示について許可していただいております。

1. Cafe IMONIKAIについて

Café IMONIKAIは、平成24年8月より、大阪市社会福祉協議会 大阪市ボランティア・市民活動センターにより、毎月第4水曜日(AM10時~PM3時)に東日本から関西地区へ避難されてきた家族を対象とした交流会として始まりました。東北と大阪を繋ぐ情報誌“IMONIKAI”(IMONIKAIとは東北地方の親睦を深める為にサトイモを入れた鍋を家族や友人と戸外で食べる名物行事“芋煮会”の事です。)が大阪市各区の社会福祉協議会を通じて各戸へ配布されています。その情報誌に精神対話士による「心のケア」の案内も掲載されています。
現在は、千木良MCE・高重MCEと3人で順番に2人一組で対応させていただいております。
私は1月から、2月、4月、6月、7月、8月と参加させていただき、今後も継続予定です。
   場所は大阪市立社会福祉センターの会議室で、参加者は毎回子供さんも含め10名前後、避難指示区域外からの(母子)避難者の方が殆どです。
   また、精神対話士の他に、保育・メイクセラピスト・ハンドケア・足つぼマッサージ等のボランティアの方々も来られ、一緒にお話したり、ケアを受ける事もあります。特に保育ボランティアの方々が子供さんの対応をして下さるお陰で、母親は数時間でも子供から解放され、ゆっくり話をすることができ、私達も対話に集中する事が出来るので非常に助かっています。
   対話は、1対1で行われる事もありますが、森松氏を中心に円卓で数名で行われる事が殆どです。対話士も円卓に一緒に座らせていただいております。

2. 母子避難者の方々の現状と対話の内容

(1) 森松明希子氏(対話回数6回)

福島県郡山市からの母子避難者で、原発賠償関西訴訟原告代表・「母子避難、 心の軌跡 家族で訴訟を決意するまで かもがわ出版」の著者でもある。避難の経緯等の講演の依頼も多く、報道番組等の取材も積極的にこなされている。
彼女は震災当時、3歳になったばかりの息子さんと生後5か月の娘さんの2人の健康と未来を守る為に、震災2カ月後から母子非難を続けておられます。夫は福島県に一人残り、家族を避難させる為に働いておられます。被災当初は、福島での生活再建を考えておられましたが、放射能(低稜線被ばく)は蓄積される事が問題だからと夫に強く説得され、森松氏の実家のある大阪へ避難する事になったとの事です。最初は一時避難のつもりでしたが、一旦福島からでて冷静に見てみると、放射能に対して感受性の高い乳幼児を福島で育てるべきではないと直感したそうです。そして、家族がバラバラで生活するという苦渋の決断をされました。二重生活の経済的負担、夫を子供から引き離してしまって良かったのか…何よりも福島へ一人残って子供の寝顔さえ毎日見る事の出来ない夫の精神状態は大丈夫か…と心労は絶えない様子である。
そんな過酷な状況にあるにも拘わらず、彼女はいつも前向きである。会へ参加する方々に常に明るく声を掛けておられ、まさにピアサポートが自然な形で行われています。そして、私にまで、「いつも気にかけて下さってありがとうございます」と仰って下さいます。
また、彼女は著書や情報誌等への寄稿の中でも「まさか自分が原告になるなんて…ずっとずっと私でなくてもという思いがあった」と記されています。また、「声の上げ方を間違ってはいけない、現地(福島)で日々放射線と向き合いながら忍耐強く生きる人達を傷つけてはいけない…出ても地獄、とどまっても地獄なのです…声の上げ方を考え続けた3年間だった…、私は声を上げられない子供たちを代弁し、避難できた私の子供たちだけが救われたら良いのではなく、等しく全ての子供たちの『いのち』が救われるように力を尽くしたい」、そして、支えて下さる周りの方々への気持ちとして、「私の拙い経験が、今後の日本社会において、少しでも防災・減災の観点からお役に立つ事があれば、それを体験談として語る事が、今の私にできる唯一の恩返しなのではないかと思っているのです」と述べておられます。
原告代表という事で、厳しい批判を受ける事もあり、辛い思いもされている様子ですが、それでも物事を悪く取らず前向きな姿勢を持ち続ける彼女の言動にはいつも敬服しています。

(2) Aさん

   (略)

(3)  その他、対話させていただいた内容で多かったもの

   (略)

(4) 対話内容の考察

 ボランティア初日を迎えるにあたり、過去の精神対話学会論文集から東日本大震災に関するものを読み直し、東日本の復興状況等を調べたりしていました。 中でも第6回・8回の尾下義男先生の「被災者への心のケアの法則」、「東日本大震災の復興支援と苦悩感に対するメンタルケアの在り方についての考察」は、非常に勉強になりました。
交流会では論文中にもありましたサバイバーズ・ギルト(戦争や災害・事故・事件等で生き残ってしまった人々が抱える罪悪感)に関する訴えが多いのではないかと予想し、深い悲しみ・自責の念・孤独感を傾聴し受け止める覚悟で臨みました。
実際、交流会へ参加してみると、所謂サバイバーズ・ギルトの訴えは殆ど無く、「ただ子供を守りたい」という一心で必死に頑張っているという内容が殆どです。辛さ・苦悩を話して下さりながらも、その中には深い愛情と強い信念を感じます。この勇気ある行動力に敬服するばかりです。
哲学者である岩見一郎氏は著書「嫌われる勇気」の中で、「大きな天災に見舞われたとき原因論的に『どうしてこんなことになったのか?』と過去を振り返ることに、どれだけの意味があるでしょうか。われわれは困難に見舞われた時にこそ前を見て『これから何ができるのか』を考えるべきなのです(目的論)」(アドラー心理学)と述べている。私はとても厳しい考え方だと感じていましたが、この交流会へくると、この目的論的な思考の方が殆どなのに感動したのです。
また、森松氏を中心に、ピアカウンセリングが成り立っています。みなそれぞれが過酷な状況にいらっしゃるにも拘わらず、同じ立場に立って励まし合い、支え合おうとされています。私はいつも相槌をうちながら、おおかたお話しをお聴きしているだけで無力さを痛感するばかりですが、避難者の方々の「ここに来ると何でも話せます。三石さん、いつも首を縦に振って一生懸命聴いてくれてて、それ見るとほっとするんですよ」、「来月も来られますか」という言葉に私自身が励まされています。

3.  避難者の方々から学ばせていただいた事

 被災者の方々との対話を通して、子供そして他人に対する愛情の深さ、そして強い信念と勇気を学びました。
エーリッヒ・フロムの著書「愛するということ」を読んだ時、感銘を受け、実践するには相当の努力が必要だと意気込んでいましたが、交流会に参加して、(母子)避難者の方々のお話しをお聴きしているうちに、フロムの述べる愛の修練「愛するには、規律・忍耐・集中力・理解力・ナルシズムの克服・客観的に考える能力(理性)・謙虚さ・融合・配慮・尊敬・責任・信念・観察力・勇気・生産性を身につけなければならない」がまさに実践されていると実感し、またもや感動したのです。
フロムは、「愛とは、孤独な人間が孤独を癒そうとする営みであり、愛こそが現実の社会の中で、より幸福に生きるための最高の技術である」、また、「愛は何よりもあたえることであり、もらうことではない」、「母親の愛は無条件である」、「愛とは愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることである」、「愛とは何の保証もないところに行動を起こす事であり、信念の行為である」、「身内に対する愛と、赤の他人に対する愛のあいだにも分業はあり得ない。それどころか、赤の他人を愛する事が出来なければ、身内を愛する事はできない。」と述べている。
彼女たちの愛情は、このフロムの言葉通り、身内の愛(母子愛)に止まらず、他人を信じ愛するという広い意味での愛情のように感じます。また、上記の愛の修練である信念と勇気、配慮、ナルシズムの克服、理性・・・がなければ、厳しい状況の中で(母子)避難という苦渋の決断ができるでしょうか… また、国と東京電力を相手に裁判の原告になるという決心がつくでしょうか… 自分自身の為ではなく、他人も含め、守るべき愛する人達の為に、精神的・経済的・肉体的…あらゆる負担が重くのしかかる中、必死で戦っておられるのです。 誰かの幸せを願いその為に努力する事をそれぞれの立場で考え行動されている、その前向きな姿勢に敬服し、私自身ももっと頑張らなければと思うのです。
   
4.  精神対話士としての役割と今後の課題

   3・11から約3年半たった今、避難者の方々へ寄り添うとはどういう事なのか…。前述の通り、この交流会では、ピアカウンセリングが成立しています。この状況下での精神対話士としての役割を考えた時、参加当初は、果たして私達は必要なのだろうか…、それよりも、交通費の問題や時間の調整がつかない、外へ出たくない等の何らかの理由でこの会に来られない避難者の方々の心のケアが必要なのではないか…と考えました。 ただ、回数を重ねる事で、対話士が交流会の輪の中に居る意味がはっきりしてきたように思います。
このような数人を対象とした対話において、特に大事だと思われるのは中立の立場での「身の差し入れ」という事だと思います。殆ど肯くだけの存在(勿論、全ての話に同意出来る訳ではありませんが、共感し受容する事は出来ます。)ですが、話している方に「一緒にいますよ」、「あなたの味方ですよ」という安心感を与える事。同じ避難者という立場とは言え置かれている環境はそれぞれ違う為に意見が衝突したりぎくしゃくしたりすることもあります。そんな時には場を和ませる一言を発したり、話し辛そうにされている方への助け船を出す。また、皆の輪に入れずに居る方にお声を掛けたり…と、そういう事ではないかと実感しています。
   今後の課題としましては、前述しました交流会へ参加する事ができない方々の心のケアも、ボランティアセンターとの協力のもとで、実践していければと考えます。
   そして、1対1の対話だけでなく、このような数人での対話にも柔軟に対応していける精神対話士としての資質を向上させる為にも、「修練は、日常生活の些細なことから始まる。第一歩は自分がいつどんなところで信念を失うか、どんなときにずるく立ち回るかを自問し、それをどんな口実によって正当化しているかを詳しく調べる事だ。」というフロムの言葉を念頭に置き、日常生活の中でも人間力を深めていく事を心掛けていきたいと思います。
   
おわりに 

地震大国・日本に住んでいる限り、誰もが同じ立場(被災者)になる可能性があるということではないでしょうか…。 3・11を風化させる事無く、3年半前の気持ち(何か自分にも出来る事はないだろか)を忘れずに、絆をもっと深いものにしていきたいと願わずにはおれません。
そして、「たった1人でもいいから、なんでも自分の思っていることを率直に話せる相手がいてくれたら、どんなにありがたいことだろう」(「いのちを癒す 『心のとまり木』」より)というナイチンゲールの言葉に深く感銘を受け、この「たった1人」になりたくてこの資格を目指し受講していた頃の自分自身の志を忘れることなく、これからも日々自己研鑽に励んでまいります。

最後になりましたが、このように視野を広く持ち考える機会を与えていただける精神対話士というこころのケアの専門職に携れることを心から感謝いたします。


<参考文献等>
  「いのちを癒す『心のとまり木』」 財団法人メンタルケア協会 小比木啓吾 監修
「人の話を聴く技術」       財団法人メンタルケア協会
  「精神対話士ハンドブック」    小比木啓吾監修 財団法人メンタルケア協会
  「精神対話学会 第6回・8回論文集」 尾下 義男著
  「母子避難、心の軌跡 家族で訴訟を決意するまで」
                   森松 明希子著
「愛するということ」       エーリッヒ・フロム著
「嫌われる勇気」         岩見 一郎・古賀 史健著
 「全国の避難者等の数」      復興庁HP




三石さまはじめ、複数の精神対話士という傾聴の専門家がチームを組んで、
毎月1回開催して下さる避難者交流会(カフェ・イモニカイ)に
第三者的立場で継続的にずっとボランティアとしてご参加くださり、
寄り添い支えて下さっています。

避難者同士だけで自由に話しているときは、半分存在を消しつつもほほえみを浮かべながら、
深刻な話をしているときなどはともに眉間にしわをよせて、
でも決して私たち3.11避難者の意見やコトバを遮ること無く、
そして同意も反論も意見誘導も決してすること無く、
ひたすら傾聴を重ねてくださっています。

言葉が出ない避難者や輪に溶け込みにくい、もしくは、
ただただ誰かに聞いて欲しい避難者には、
そっとそばに寄り添いずっと忍耐強く接してくださっています。

精神対話士のボランティアの皆さんが入ってくださることで、
本当に安心できる避難者がホッと出来る「空間」が維持できていることを
毎回、心から感謝しています。
これからも、寄り添い、お支え下さる心からのご支援、
どうぞよろしくお願い致します。

また、避難者が安心して集まりお話できる「場」を
震災1年後からずっと欠かさず継続して作って下さり、
結果、避難者同士のつながり、精神対話士の皆さまとのお出会いの場をご提供くださいました、
大阪市社会福祉協議会(ボランティア・市民活動センター)様の
避難者交流会カフェ・イモニカイのお取り組みにも、
心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

過去の開催の様子は→コチラ

7月のカフェ・イモニカイのご案内は→コチラ
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