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【書評】無理解な社会に訴えるには同情ではなく、人間の尊厳を訴え、憲法に明記された人権の尊重を要求してこそ獲得するべきものであるby水戸喜世子さん/ 森松 明希子・著『災害からの命の守り方ー私が避難できたわけー』(文芸社)

【書評】水戸喜世子さん.jpg

【書評】水戸喜世子さんFacebookより)

お正月に、森松明希子さんの新刊書「災害からの命の守り方~私が避難できたわけ~」を一気に読んだ。
感銘を受けたので、一端を紹介させてください。

470ページという長編だが、
読んでいく中で、著者にとってこれは必要最低限の紙数であることに、すぐに納得がいった。
冗長で退屈な場面は全くない。
体験した「避難者」に対する人権無視の扱いと不条理な世間の風当たり、無責任な政治のありように努めて理性的に、反論を試み、世論に訴える著者の姿勢に、ただただ敬服する。

思ってもみない東日本大震災と東電福島原発事故という非常事態に出会った時、著者は0歳と3歳の子どもを抱える普通のお母さんだった。どうやって幼子を放射能から守るか、情報もない中で混乱し、迷い、試行錯誤の中で、たどり着いた結論が関西への避難という選択だった。空気も水も汚染しているなかで、母乳を飲ませること自体が、危険極まりないことを直感されたのか。かつて8000キロ離れたチエルノブイリから飛来した放射性物質により、日本のお母さんの母乳から放射能が検出された事実はご存じなかったようだ。原発事故が起きたら汚染地帯から1メートルでも遠くへ逃げることは原発事故の際の鉄則だから、結果的に 関西への避難は正しい選択だったが、その正しい選択に対して周辺の人々の反応、社会の反応、政府の反応は理不尽そのものであった。

著者は精神的に葛藤しながら、不条理と立ち向かう為には同じ境遇の避難者が結束しなければ闘いを有利に進められないことに気づき、彼女は裁判でも避難者組織でも代表者となることを引き受ける。

一人の我が子の身を案じるお母さんから、一人一人が異なる環境異なる考えを持つ避難者集団の代表者として、その権利を代弁する役割を率先して担ったことにより、急速に普遍的論理を獲得してくことに。無理解な社会に訴えるには同情ではなく、人間の尊厳を訴え、憲法に明記された人権の尊重を要求してこそ獲得するべきものであると。反核の海外支援者とつながって国連での支援要請へと闘いの場を拡大していく。当事者と支援者が「同情」ではなく「人権」により、初めて横並びに、おのれの問題として 対等につながることができると彼女は確信するにいたる。

著者が力説する不当な扱いにもかかわらす、この本は痛快の書である。
暗さなど微塵もない活力に満ちている。希望さえ感じる。

やられたらやり返せ。われわれの武器は法律と人々の連帯。命以上に大事なものなんてどこにもない。時代は民主主義、憲法があるじゃない。国連人権規約があるじゃん!

国連人権理事会で2分間のスピーチが許されるチャンスが彼女に舞い込んだ。日本語であっても2分間で意を尽くすのは並大抵ではないのに、やったこともない英語で話さねばならない。反核をねがう人民のネットワークは素晴らしい。達人の支援者の特訓とサポートで見事に乗り切る場面はスリル満点、感動ものだ。彼女は書いている。
「仮にもう一度 国連人権理事会でスピーチの機会が与えられたとしても、私は全く同じスピーチを繰り返すでしょう」。その日本文を引用しておきます。

《37回 人権理事会本会議 森松明希子スピーチ》
森松明希子です。
避難者の母親とグリンピースと共に来ました。
私は2011年5月、福島の災害から逃れる為に、二人の子どもを連れて避難しました。
原発事故後放射能汚染は広がりました。
私たちに情報は開示されず、無用な被ばくを重ねました。
空気、水、土壌がひどく汚染される中、私たちは汚染した水を飲むしかなく、赤ん坊に母乳を与えてしまいました。
放射能から逃れ、健康を享受することは基本的原則です。
日本の憲法は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の裡に生存する権利」と書かれています。
しかし日本政府は,市民を守る施策はほとんど実施してきませんでした。
その上日本政府は、放射線量の高い地域への帰還政策ばかりに力を注いでいます。
日本政府は、国連人権理事会での勧告を直ちに受け入れ、実施してください。
国連加盟国の皆さんの、日本の人々への人権擁護の働きに感謝します。
今後も福島の、そして東日本の、特に脆弱な子どもたちを更なる被ばくから守ることに力を貸してください。

外国語はできないよりはできた方がいいに決まっている。しかし、それ以前にもっと大事なことは「語るべき主張を持っていること」だ。情けない動機で、バックパッカーとして世界を放浪して歩いた経験から私が学んだ真理。絶対これだけは伝えたいという強烈な意志さえあれば、人と人はつながりあえるもの。

彼女はこう語っている。「基本的に母語で自分の被害をきちんと訴えられることができれば十分であり、通訳や翻訳は、その能力やスペシャリストもいるわけですから、その方々に大いに力を発揮していただければ良いということも、私は明確に知ることになりました。ですからこれから先、何か自分の権利が侵害され、命の危険に晒されるような事態に遭遇したときには、たとえ英語が話せなくても、恐れず、臆さず、国連も一つの訴えや助けを求める先として、リストに加えていただければ良いのではないかと思います。」言語の本質を言い当てている。

原発事故のあと、被害者に対して政府や東電がとってきた対応は 卑劣の一言、人間性のかけらもないことは、「子ども脱被ばく裁判」を通じて検証済みだ。法律違反どころか放射性物質については法自体が不備のまま放置されているのが実態である。森松さんは幸い大学で法律を専攻されたことと無関係ではないだろう

「自分の頭で考えることが最高の危機管理」
と言い切る。同感だ。最終章は「3・11福島から新型コロナウイルス感染症まで」となっているが、福島原発事故から学んだ思考法を用いてウイルス事件を読み解く。間違っていないだろう

我が子への甲状腺検査については 「安心も安堵もできず、ただ淡々とこの先も検査を受け続けるのみです。
この心境を世界中の皆さまにはご理解、ご想像していただけるでしょうか?」と「持続的被ばく」について述べている個所には、胸がキリキリと痛んだ
コロナ下を生き抜くための書としても、ぜひとも多くの方に読んでいただきたい。展望と元気が出ること請け合いである。


お正月に、森松明希子さんの新刊書「災害からの命の守り方~私が避難できたわけ~」を一気に読んだ。感銘を受けたので、一端を紹介させてください。

470ページという長編だが、読んでいく中で、著者にとってこれは必要最低限の紙数であることに、すぐに...

水戸 喜世子さんの投稿 2021年1月5日火曜日


https://www.facebook.com/kiyoko.mito.98/posts/1621197848059596

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