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【東京新聞】 原発避難者 実態理解を いじめ再発防止へ声明(2016年12月23日)

東京新聞 2016年12月23日

朝日新聞20161223

原発被害者の子どもに対するいじめについての声明

2016年12月22日

       原発被害者訴訟原告団全国連絡会
       共同代表 早川篤雄 中島孝 鴨下祐也
          村田弘 森松明希子 金本友孝

胸が痛むいじめ事件

横浜市の事例をはじめとして、各地に避難している原発避難者の子どもに対するいじめ事件が報道されています。
私たちは、この「いじめ」の連鎖に深い悲しみと怒りに打ちひしがれています。どのような理由であれ、いじめは絶対に許されるものではないことを訴えます。本来学校は、子どもたちが安心して教育を受けられる場でなくてはならないはずです。管理が強化されているなかでも、学校は子どもたちの成長や悩みに寄り添い、すこやかな人格の形成を進める場であってほしいと願います。
残念なことに、報道された原発避難者の子どもに対するいじめは氷山の一角です。そして、子どものみならず、大人の世界でも、心ない仕打ちや嫌がらせという事態が続いているのが実情です。全国21か所で提訴している私たちの裁判の中でも、以下のように、多くの法廷で、子どもや大人に対するいじめや嫌がらせがあることが明らかにされています。
・避難地から福島に戻り、新しい学校に転校、少し新学期から遅れたために、いじめにあった。その結果不登校になり、転校した。
・福島県民と分かると差別されるので、出身地を言えない。隠れるように生活している。
・福島から来ましたとあいさつをしたら、あなたとはおつきあいできませんと言われた。
私達原発事故被害者は、このような事態が生じてしまう根底には、残念ながら、以下のとおり、原発事故による被害者が置かれた現状に対する周囲の理解が不足しているものと感じています。

原発事故による避難者が置かれた現状

原発事故による避難者は、原発事故そのものによる被害を受けたばかりか、国や東京電力による誤った被害対応と、被害区域の線引きによる「分断」、不当な「帰還政策」による被害者の切り捨てによって、さらに苦しめられています。
国と東京電力は事故発生の直後から、国による避難指示の範囲と被害補償をリンクさせる「分断」政策をとることによって、責任を曖昧にして賠償を低額にとどめようとしてきました。そのために被災者は、「避難するか、留まるか」という、いのちと健康に関わる個々の判断を「賠償」の有無という「基準」によって歪められてきました。
その結果、被害補償の打ち切りによって不本意な帰還を余儀なくされ、他方では避難区域外からの避難者は、現に避難生活が続いているのに、何の保障も得られず、困窮に陥るという事態が生じたのです。
さらに、事故後5年目を迎えた昨年から、国と東京電力は、「福島原発は終わった」「汚染水は完全にブロックされている」という誤った説明を繰り返して、「帰還強要」政策を強めました。
すなわち、来年2017年3月には帰還困難区域を除いた避難区域を解除し、これと合わせて賠償と住宅支援打ち切りという、被害者の切り捨てを強行しようとしており、福島県もそれを容認しています。
他方で、帰還困難区域についても、復興支援住宅などへの「定住」を求める政策が始まっています。これらは、「もう安全だから避難など認めない」か、「もう戻れないのだから移住しろ」という両面によって、「避難者をいなくする=抹消する」ことを目論む政策と言わざるを得ません。
その「論拠」として言われているのが「20ミリシーベルト以下の放射線被ばくには健康への影響はない、癌の発症率は、喫煙、肥満、野菜不足の方が高いなどという「20ミリシーベルト安全論」です。しかし、そのような言説は、国際的な放射線防護学の知見に反するものであり、ICRP(国際放射線防護委員会)の見解では、100ミリシーベルト以下においても、被ばくした線量に応じた影響があるとされています。それにもかかわらず、国と東京電力は、あたかも福島県全土が放射能汚染から解き放された安全な地域になった、帰らない方が悪いと思わせようとする政策をとり続けているのです。
その目的は、賠償責任を小さくすることと、帰還の促進によって「復興」を進めようとすることです。こうした意図による「復興政策」「避難者抹消政策」のために、困難な避難生活をしている被害者が一層困難な状況に追いやられていることを、どうかご理解頂きたいと思います。
このような政策が実施され、さらにはその内実や被害者の置かれている実情の報道が不十分な中で、誤解と偏見が蔓延していることから、残念ながら、本来被害者である福島県民・原発被害者に対し、「多額の賠償金をもらっている」とか「なぜ帰らないのか、わがままだ」という誤った理解や、歪んだ見方をしてしまう風潮がつくられていることも事実です。
私達は、原発事故による被害者が置かれたこのような現状が周囲に十分に理解されていないことが、全国で報道されているような、いじめや嫌がらせにつながっているのではないかと感じています。

深刻な被害の継続と、国と東電の明白な加害責任

各地における被害者を原告にした裁判を通じて、避難区域からの強制避難者も避難区域外からの避難者も同様に、避難生活による著しい生活阻害による苦痛が今も続いていること、そして「故郷(ふるさと)の喪失」という深刻な被害が生じていることが明らかになっています。被災者の多くは、懐かしい町で家庭を築き、学び、働き、地域の暖かな交流の中で過ごしてきたのです。そうした大切な故郷(ふるさと)に戻れないということは、人間にとって耐えがたい事態です。
そして、現在も多くの被害者が避難生活を続けていますが、皆、故郷(ふるさと)を深く愛しているけれども、「避難をする必要があるので避難を続けている」のです。誰が、深く愛している故郷を、理由もなく離れることができるでしょうか。
原発事故被害者が受けている甚大な被害は、国と東京電力の過失によるものであり、法的責任を負うことも明白です。これまでに多くの専門家の知見によって、この事故は「想定外の自然災害」などではなく、東京電力は津波によるシビアアクシデントの発生を予見できたこと、従ってこの事故を防止する手段を講じることが可能であったことが示されました。また、原発事業に対する安全規制の責任を負う国も、必要な規制権限の行使を怠っていたことが明らかにされています。
それにも関わらず、被害者である避難者が、被ばくを避けるためにやむを得ず行っている避難生活について、心ない批判や理不尽な仕打ちを受けることは、まことに残念な事態です。

私たちは訴えます

子ども社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。「子どものいじめ」は,実は誰にでも起こりうることです。そして何よりも、被害者への「いじめ」はそれによって自死に至ることもある、人の命に係わる重大な問題であり、国際人権法と日本国憲法で保障された、基本的人権の侵害にほかなりません。原発事故にかぎらず,すべての災害の被災者は社会全体で保護すべきであることは国際人権法で確立されている原則です。
子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの「子どものいじめ」問題として捉えるのでは不十分です。私たちは、上記のとおり、やむを得ず故郷(ふるさと)を失い、困難な避難生活を送っている深刻な被害、あるいは今も日々被ばくの不安にさらされている被害の実相について、多くの国民のみなさんのご理解を切に願うものです。それが、原発事故を二度と起こさないための、そして被害者への二重の侵害となるいじめを繰り返さないために必要な礎になると信じます。
みなさまのご理解と温かいご支援をお願いいたします。

                              以上


(その他報道)
原発避難でいじめ、原告団が声明「報道は氷山の一角」「大人の世界でも嫌がらせ」
弁護士ドットコム 12/22(木) 17:35配信
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